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「ペットとの生活を豊かにする!どうぶつの深い話」Vol.6


 日本国中が猛暑に見舞われた今年の夏であったが9月の下旬にもなると秋らしい爽やかな季節となってきました。秋は食欲の季節、山では松茸・栗、海では秋刀魚・秋サバ・秋サケが美味しく魚好き人間にはたまらない。しかし一寸待って、この季節に刺身を食べてアニサキス症になるヒトが沢山みられる時期でもある。
 アニサキス症は寄生虫の幼虫が感染して起こる病気で、アニサキスは線虫類の仲間でミミズのような姿をしている。アニサキスは10種以上知られているがそのうちの数種類がヒトに感染する。アニサキスの成虫は体長10cmほどでクジラやイルカなど海産哺乳類の胃に寄生している。その生活は、雌成虫から生み出された虫卵は海水中で発育・孵化した子虫は海老の親戚であるオキアミの体内で育ち第3期幼虫になる。さらに待機宿主である魚介類(サバ・サンマ・サケなど)食べられると第3期幼虫のまま寄生を続ける。第3期幼虫が寄生したオキアミや魚介類をクジラなどが食べるとその胃内で成虫になるがヒトがこの第3期幼虫を食べると胃壁や腸壁に穿入して腹痛を起こす。ヒトでは成虫になることはない。
 アニサキス症の感染源となる魚介類は120種以上知られている。アニサキス症の原因となる幼虫はAnisakis simplexが大半を占めておりサンマ、サバ、サケ、カツオ、イカ,ニシンが最も多い。次いでPseudoterranova decipiensの症例が多くマタラ、スケソウダラなどに多く寄生している。症状は過去に感染して感作されているヒトは再感染によって強い即時型過敏反応を起こし、消化管の攣縮・浮腫・狭窄などを生じ激症型となる。初めての感染では緩和型となり軽症に経過する。予防はお刺身を食べないことである。幼虫は60℃数分で死亡する、冷蔵庫では50日も生きているが、-20℃にすると24時間で死亡する。お刺身を食べたい方は冷凍処理したのを食することを薦める。でも新鮮な生を食べたい気持ちもわかるが危険も隣り合わせであることを知っていただきたい。これからは刺身の定義は熱を加えるか冷凍したものを刺身と呼ぼう。
【閲覧注意】
以下、寄生虫の画像が出ます。














ヒトの胃に穿入しているアニサキス幼虫

スケトウダラの肝臓表面に寄生するアニサキス幼虫
(丸まって被嚢している虫体)

イルカの胃壁に穿孔して寄生するアニサキスの成虫

サバの内臓から取り出したAnisakis simplex の第3期幼虫(体長1.5㎝)

教員プロフィール

副学長 内田 明彦 教授

獣医学博士・獣医師・麻布大学名誉教授

寄生虫学、ヒトと動物の共通感染症が専門。また寄生虫学の研究成果や知識を実践に生かすために、中南米や西アフリカなどの国々で、寄生虫症撲滅対策指導者として現地の研究者に向けて指導も行っています。

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