次に「被毛と皮膚の清潔」を保つことです。秋は夏に比べて皮脂分泌が落ち着きますが、抜け毛の季節でもあるため、毛の間に古い皮脂やほこりがたまりやすくなります。週に数回のブラッシングは、余分な毛を取り除き、血行を促進し、皮膚の健康維持に役立ちます。また、シャンプーは月1〜2回を目安に行いましょう。人間用のシャンプーは刺激が強いため避け、低刺激で保湿成分を含むペット用シャンプーを選ぶことが重要です。
　食事もスキンケアに大きく関わります。皮膚や被毛はたんぱく質や脂肪酸から作られているため、栄養が不足すると毛づやが悪くなったり、皮膚が荒れたりします。特にオメガ3脂肪酸やビタミン類は、皮膚の健康を助ける栄養素として知られています。サーモンオイルや亜麻仁油を含むフードやサプリメントを取り入れると、乾燥対策や炎症の抑制に役立つ場合があります。ただし、与えすぎは肥満につながるため、必ず適量を守るようにしましょう。
　さらに、室内環境にも注意が必要です。秋が深まると暖房を使う機会も増えますが、暖房は空気を乾燥させ、皮膚の水分を奪います。加湿器を利用して湿度を40〜60％に保つと、動物にとっても快適な環境になります。また、寝床に清潔で柔らかい素材を用いることで、皮膚への摩擦や刺激を減らすことができます。
　最後に、日常的な観察が最も大切です。かゆみで同じ部位を舐め続けていないか、フケが増えていないか、赤みや脱毛がないかをこまめにチェックしましょう。軽い乾燥やかゆみなら家庭でのケアで改善することが多いですが、症状が強くなった場合はアレルギーや皮膚病の可能性もあるため、早めに動物病院を受診することをおすすめします。
　秋は一年の中でも過ごしやすい季節ですが、皮膚にとっては変化の大きな時期でもあります。毎日の小さなケアと飼い主さんの気づきが、愛玩動物の健やかな皮膚と美しい被毛を守ります。家族の一員であるペットが快適に秋を過ごせるよう、ぜひスキンケアを生活の中に取り入れてみてください。

生越 直仁　教授

博士（獣医学）

薬理学を専門とし、薬物（化学物質）や食品を人や動物が摂取したときの相互作用を調べ、その有効性・安全性を明らかにし、エビデンスを重要視した製品開発に取り組んでいる。

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